皆さんこんばんは!日橋喩喜です。
今日は父の押し入れにあった、魚釣りゲームで遊んでいました。
暖房を暑いくらいに設定して、手がかじかまないようにします。
電池を変えて、スイッチを入れて、ジジジジという懐かしいギアの回る音(多分)を堪能します。
釣り竿の先には磁石がついており、回転する魚の口の端にも磁石がついているため、引き合って吊り上げられるという寸法です。
私は今、濁流の淀みに向かって立っています。そこには恐ろしい顔をした、大きな魚が一体となって渦を作り、釣り竿の先の餌を、いや、あわよくば餌がつながる糸の先についている私を引いて飲み込まんとしているのです。
波の音は最早せず、魚のうろこがこすれ合ってジジジジという音が鳴り響いています。
意を決して糸を垂らすと、奪い合うかのように次々に魚が交代しては餌に食らいつこうとしています。やる気満々なようです。
私はその緊張感から出る額の汗を拭いて、しっかりと両手で竿を握ります。
育ち盛りの魚たちは、生存本能がむき出しでです。
暴れまわって飛んだしずくが、私のところまで飛んできています。
一瞬、額がさあっと涼しくなったとき、一匹の魚が餌に食らいつきました。
そこからの決着はあっと言う間でした。
魚よりも体幹が強い私は釣り竿をぐっと引き上げ、右左に振る間もなく魚を地上に引き上げます。
よし!やったー!と喜んでいると、部屋のドアを細く開けた母が言いました。
「ごはんよ。あと、暖房きかせすぎ」
魚との勝負は私の一勝で終わりました。
敗北した魚はまだジジジジという音を立てて、恨めしそうにこちらを見ています。
颯爽と食卓へ行くと、今夜はサバの味噌煮でした。
ああ、私が釣ったあの魚はサバだったんだな。
そう考えながら、あの戦いのことを思い出していました。