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2020年1月21日火曜日

カニへの初期衝動

皆さんこんばんは日橋喩喜です。

今日は私の部屋の本棚にある、箱の中のものを一つ紹介しますね。

これです。蟹の甲羅!

3歳の頃親戚のおばさんがいっぱい送ってくれて、家族でカニ鍋にして食べ終わったのを、お母さんに駄々をこねてもらったやつです。

「カニを……カニを……
と泣く我が娘を、当時の両親はどのような思いで見ていたのでしょうか。今でもなんとなく聞けません。

何がよかったのかと言うと、まずは表のトゲトゲの固い感じ。地獄で研いだかのような攻めの鋭さと、生命の防御痕。裏を返せばいびつな楕円に輝く、平面的な極彩色。天国のお殿様が、桃の透き通ったお酒を入れて飲んでいるかのような器感のある丸み。

それが表裏一体となっているのです。女児が欲しがらないわけありません。当時の喃語力
では言い表せませんでしたが、後からその時持ったイメージを言い表すとそのようでした。

時々箱から取り出して眺めては、その時の父の曖昧な微笑みを思い出します。それからしばらくは、父はカニカマをよく買ってきました。まあカニが食べたいというわけではなかったのですが、笑顔を浮かべて食べていました。美味しかったです。

その後もカニを食べる機会はあったのですが、それ以降のカニは集めていません。大人に近づくにつれて少しずつ虫に苦手意識を持つようになって、それとともに、カニはほとんど食べなくなってしまいました。

その最初のひとカニ。それだけが私の心に残り続けているのです。