今日の文学特講の講義で面白い本と出会いました。
相澤友吉氏の『ポルトガル見聞録』です。
この本は広羊市の図書館に所蔵されている本で、江戸時代中期に半からポルトガルへの留学を命じられた相沢がどうしても行きたくなくて長崎へ行き、そこでこっそりであったポルトガル人から、ポルトガルの風俗や武器の情報を聞き出して、あたかも留学してきたかのようにまとめた報告書です。
当然、ポルトガルに出港した船への乗船記録がなかったため、バレて横領の罪を着せられて打ち首になりました。
彼の死後、「これはこれで価値のある報告書なのではないか」と評価されそうになったのもつかの間、報告書に書かれていた三つの地図が全て違う形であることを発端に、さらなる精査が行われた結果、相沢が取材したポルトガル人から嘘の情報を吹き込まれていたことがわかりました。
かわいそう。きっと大金を払っただろうに。
さて、このポルトガル人から嘘を吹き込まれ藩を騙そうとした男の、報告書として無価値の本は1973年に再び脚光を浴びることになりました。
これには動物学者が食いつき、当時のネズミの食生活を知るヒントとして研究が始まりました。
欠けた歯形だったことから、それだけ固いものを食べていたようです。
その次に食いついた芸術家です。
江戸時代のネズミがチーズのページをかじる。その意図的か無意図的かわからない偶然のような行動が、空想かきたてる物語としてウケたのでしょう。340万円の値段がついていた時期もあったそうです。
(私はチーズを食べた相澤がそのべたべたの手でチーズの項目を開き、ページをめくるときに置いた指のところにネズミが食いついていただけだと思いますが……)
最終的にこの「ポルトガル見聞録』は、博物館から美術館のどちらに納めるか討論されましたが、いつのまにか双方飽きて、図書館での保管になりましたとさ。