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2019年4月23日火曜日

ベンチの下のスケッチブック

大学で美術を学んでいる人達がいる棟の隅にはベンチが置いてあり、1人になりたい時には うってつけのサナトリウムです。


ベンチを独り占めする、悪い私
その日の下に水を吸ったスケッチブックが置いてありました。


私のポケットに今日ハンカチを持ってきたことを確認した後、スケッチブックに手を飛ばしました。


開けてみると中の用紙が切り刻まれたりしている中にハッピーバースデー誰それと書いてあり、多くの絵が黒塗りしてあったり、手を加えるためのメモが書き散らしてあります。

最後のページは昨日の日付。


そのページは ネクタイをした男性と歯車を模した背景。
男性と歯車


大学で美術を学んでいるにしてはチープなモチーフです。


しかし、だからこそ葛藤が透けて見え、かえって感傷的な気分になった途端はっとしました。


これは、美大生としての就職活動に苦しみ、ベンチの下にスケッチブックを放置することで、己の才能の無さを自覚してモラトリアムから抜け出そうとする人という芸術なんだと。

芸術って奥が深いなと改めて感じながら、自分を陰で観察しているだろう人を探しました。

見つからなかったので、「そこから見てますね!」と虚空に声をかけて購買にパンを買いに行きました。