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2023年9月19日火曜日

『アステロイド・シティ』を観ました。【おすすめ】

 今月9月1日に公開されました、ウェスアンダーソン監督の『アステロイド・シティ』を観に行きました。


簡潔に言うと、一度ひっくり返したおもちゃ箱を、正解はないけど最適解で整然と詰めていて、とにかく気持ちがいい作品でした。


ウェスアンダーソン監督を知ったのは今年なのですが、夏休みで時間があったので、『フレンチ・ディスパッチザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』や『グランド・ブダペスト・ホテル』などの過去の名作を次から次に拝見して、その独特の色使いや、シンメトリーの背景の真ん中に登場人物を置いておくような、人間ドラマのお芝居を描いているというよりも、映像美を求めて作られた箱庭の中に人間の形をしたお人形をたくさん置いておくようなそんな可愛らしさにドハマりしてしまいました。


今回見に行きました『アステロイド・シティ』も、youtubeで公開されていた予告映像から面白そうな雰囲気が漂っていましたので、サブスクリプションサービスでテレビで映画がいくらでも見られるこの時代に、映画館に行って観たいと強く感じました。


でもね、予告映像で流れていた列車はあんまり出てこないの。それどころか、予告映像から察するに宇宙人がやってきて、天才子供たちがどうにかこうにか撃退をしたり、人差し指同士を突き合わせて仲良くなったりするような、そんなコメディでもないの。驚いたわ。SFコメディはミスリードで、実際のところメタ演出系ラブストーリーだったもの。


でも、詐欺でもないし、つまらないわけでもありません。乾いた笑いが出るコメディです。むしろ作品の意図にのっとって、あえて重要な部分を削っているような予告映像だったということが後から理解できました。


今年の夏に公開されました、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』という映画では、多くの映画通の人たちがこぞって考察をしていましたが、この『アステロイドシティ』もどちらかというと考察が捗るタイプの作品です。


解説の動画もいくつか見ましたが、オマージュもいろいろあるらしいのですけど、作品を面白がってみるだけなら、事前知識は特に仕入れなくてもいいです。ウェスアンダーソン監督のことをもっと知るなら、作品の中に隠されたオマージュを探す必要もあるかと思いますが、単にこの『アステロイドシティ』という作品を楽しむだけであれば、虚構と現実がひっくり返ったということだけ分かれば、その理解だけ抱えて、あとは冷然としたコメディとして笑っていればいいと思います。


この作品はVtuberやゲーム配信者がなぜ支持の対象になるのかという問題の明確な答えになっているような気がしました。


虚構に生きなければ現実の痛みに耐えられない。


世の中にはそういう人たちがいることを私たちは潜在的に知っているはずです。

端的に言うと、そのような思いや実感のある人たちが、現実の痛みを表に出せないような境遇で、無表情に耐え続け、むしろ演劇や映画の中の登場人物の一人になったような感覚で、嘘のセリフを吐ける場所がなければ感情の一滴も表情に出すことができない。


そんな日常生活の中で感じる悲しみを、人間は抱えていることを思い出させてくれるのです。


でも、多分、みんなが現実で幸せであるとするならば、この作品は世に必要ないと思うのです。


虚構のなかでなければ、生きている感じを味わえないような不幸な現実に陥らなければ。


皆が現実で幸せであるならば。


その、人生で起こりうる理不尽な傷跡に創作物が寄り添い、台無しにしてすっぽ抜ける不条理な空虚感をすごくかわいい感じで覆い隠している感じがしますので、是非皆さんも観に行ってくださいね!!すぐに!!


最後に、この作品は日常への不満をいつも抱えていて、その不満さから現実で感情を露わにしたり、人を傷つける言葉を発したりしても、同じコミュニティにとどまり続けることができて生きていける、人生が明るい消費者には最低の駄作に見えるのではないかなと思いました。


それでは、そろそろ寝ることにします。眠らなければ、起きられないから。


以上、大学生Vtuberの日橋喩喜でした。


PS:もし日本でフルリメイクされるなら、後藤ひろひとさんの監督で観たいなあと思いました。


2023年1月2日月曜日

向日葵の咲かない夏【オススメ】

 年末年始に読んだ本を紹介します。


道尾 秀介さんの『向日葵の咲かない夏』を読みました。

Amazon作品紹介引用

「夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。」

本当にすごかったです。

タイトルと作品紹介から、スティーヴン・キングさん作の『スタンド・バイ・ミー』のような、ジュブナイル、少年期回顧にミステリーが合わさった作品で、映画ドラえもんのようにハラハラ懐かしい気持ちになれるんじゃないかと思って購入したんですが、間違いでした。

多分、友人から「おすすめのSFだよ」と言われていた先入観と、紹介文の最後の一文の「あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。」という一文だけを脳内で組み合わせた結果そう思っただけで、前半部分を読み直すと、ちゃんと物騒なことが書かれていますね。

ミステリーなので、多くは語れないところが歯がゆいのですが、どうしても話したいことだけ書きます。ここからはネタバレを含みます。






主人公の男の子が子供なので、推理を間違うんです。ミステリーといえば「探偵」という固定観念を持っているので、ミステリージャンルの推理って、一発で正しい答えを出すという思い込みがありました。でも、その間違いがミスリードになっていて、それが話の展開のドキドキを生み、謎全体の輪郭を明らかにするんです。

そのうえ、違和感のある登場人物たちが、ずっと作品の違和感を醸し続けます。

歳の割にあまりに賢すぎる妹、あまりにも怖すぎる母親。それから、あまりにもな級友。


幼い目線で書かれているのでなんとかついていける、形而上的に展開する謎への追従に、おせちを食べながら冷や汗をかき続けていました。






ネタバレ終わり


ミステリー×ホラー×リインカーネイションの組み合わせを楽しめる人におすすめです!

文章でしか楽しめない作品です。ぜひ読んでみてくださいね!



PS:

年末年始なので、もう少し冬らしい作品を読めばいいのにと後から思いました。


2022年2月6日日曜日

とりあえず論破しておきますね。【お薦め】

『とりあえず論破しておきますね。』というゲームを遊びました!

タイトルでほほ笑む謎の女性

皆さんこんばんは、日橋喩喜です。

今日は久しぶりにふりーむに投稿されているゲームを遊びましたので、ご紹介いたします。

皆さんはグランピングというのをご存知でしょうか?

人はストレスに晒されたとき、誰しもキャンプに行きたくなるものですが、キャンプというと危険だし、面倒くさいイメージがありますよね。

しかし、そのキャンプの準備を全て他の誰かがやってくれるとしたらどうでしょう?

例えばキャンプを建てるのも係の人がやってくれて、食事の準備も他の人に任せ、帰る時にも自分が片付けなくても良い。そんなサービスがあるとしたら、是非キャンプをやってみたいと思いませんか?

近年は全国各地で グランピングをすることのできるサービスが増え、自然の中でご家族の方や友達同士でフラっと自然へと帰ろうとすることができます。

それはさておき、人間は論理的思考力で自分を不利にしようとする人々を論破して、その場をしのぎます。

人生の最後、 究極の窮地に陥った時に人はどのような言葉を発するのでしょうか。

製作者 hinata 様
twitter→@hinatagames4

実況はこちら!↓


2022年1月13日木曜日

アンリアルライフ【お薦め】

年末年始に遊んで面白かったゲームを紹介します。(最終回)

アンリアルライフ



-先に進まず、立っていたい青い世界‐

高知能AIを搭載した信号機と記憶を無くした少女の組み合わせに、どうしてこれ程まで魅かれてしまうのでしょうか。

ひとつは、「待つ」という行為がとてつもない程に感情を動かされるものだからだと思います。大宰治の『待つ』という作品のように。
あなたを待ってくれる人は味方であなたを待ってくれない人が敵です。

少女を待っていた人達を辿ることで、なぜ彼女が記憶を失ったのか、その理由が明らかになっていきます。

もう一つは青。信号機の赤と対比した、青色。
私達が青という色に期待することを余さずにしてくれます。

夜の青、水の青。透き通る心と体。
異世界をめぐる神秘的な体験と死。

ドット絵の豊かな色彩は、少女をいつまでもそこに佇ませたくなるのです。
ストーリーの終着先はどこかで見たことのあるものではありますが、登場人物達の組み合わせが奇抜だからこそ、帰ってくる場所が確かである安心があります。

現実的な非現実で佇みたいあなたにお薦めです。

是非体験してみてください!

日橋喩喜でした。