昔々あるところにキリンさんがおりました。 キリンさんは病気で苦しんでいます。
毎日毎日咳が出て、ゴホゴホと咳をし、38。9℃の熱が今日も出ています。
それを心配したぞうくんは、キリンさんのおうちに行ってきました。
「何か、何か手助けできることはないですか」
そう聞くとキリンさんはこう答えます。
「山の方にある穴蔵に、 アナグマくんがいます。どうかそこに行って薬をもらってきてほしい」と言いました。
ぞうくんは「分かった、分かったよ。キリンさん、絶対助けるからね!行ってくるね!」と言いながら逆方向に向かって歩き出しました。
歩けども歩けども、一向にアナグマくんの家に近づくことはできません。
はっと気がつくと、小高い丘にたどり着き、日はとっぷりと暮れています。
街灯がありませんので、空には満天の星空。
今は夏の大三角形が沢山の星と共に見えています。
もしかするとあれがぞう座だったりするのかもしれないなあ。
そう思うとぞうさんは胸がときめきました。
いつかキリンさんとここに来てこの星空を一緒に見るんだ。
そう思ってぞうさんは 再びとことことことこと 逆方向に歩いて行きます。
1日と20時間経って、 ぞうさんは気づきました。
「空に浮かぶ人工衛星の角度から見ると、もしかすると僕は結構方向に来ているんじゃないかしら。」
そう思って近場にいたナマケモノくんに話を聞きます。
「あの、あの申し訳ないんだけれども、アナグマくんのお家ってどこがご存知ないですか? 」
ナマケモノくんは、1時間45分かけて言いました。
「逆方向だよ」
「そ、そうなんだ。ナマケモノくん、ありがとう」
そしてぞうさんは、逆の逆方向にとぼとぼとぼとぼと歩いて行きました。
また夜が来て、小高い丘に着いたぞうさんは満天の星空を眺めます。
はあ、なんて無駄足を踏んでしまったんだ。
1日とちょっと無駄にしてしまったじゃないか。
あの人工衛星に気がついていれば、もっと早く自分の過ちにも気がつくことができたのに。
ぞうくんは飯と自分の罪悪感を覚えながら、とことことことこと、満天の星空の下を歩いてきました。
1日と20時間また歩いて帰り、キリンさんの家の前に着いた後、そこから3時間歩いて行ったところにアナグマさんのお家があります。
「あのー、あの、アナグマさん申し訳ないんだけど、僕じゃなくてきりんさんがですねあの、薬を必要としていまして、どうか分けていただけませんか。」
ぞうさんはそう言うと、アナグマさんは言いました。
「あーもう持って行きましたよ。」
「え?」
「うんそう。あのキリンさんがね、ちょっと病気だって言うこと聞いていたから。ここから3時間歩いて行ったところなので持って行っちゃいましたよ。今頃は多分元気にしてると思います。是非言ってあげてください。ぞうくんのことをずっと待っていましたよ。
「そ、そうなんだ。ありがとうアナグマさん。」
洞穴を出て象くんはとことことことこと3時間の道を帰ります。
キリンさんの家の前まで来てトントンと戸を叩くと、キリンさんが出迎えてくれました。
「ぞうさん久しぶりだね待ってたよ。どうしたんだい君は、遅かったじゃないか。」
「あのーあのーもしかすると、心が疲れているんじゃないかと思って、君と一緒に見たい星空を探していたんだ。」
「そうなんだ僕は風邪だったんだけどね。誘ってくれたことがとっても嬉しいよ。そうだね。それじゃあ一緒に行こう。
それからふたりはとことことことこ小高い山に行って、美しい満天の星空を眺めましたとさ。