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2019年5月1日水曜日

三上パン屋のご主人の話1



私がいつも行く三上パン屋のご主人、三上才吉さんは中学生の頃サッカー部だったそうです

ご主人が中学生の頃の指導は非常に厳しく、部活動中の水分補給は禁止、うさぎ跳びの強要、ネズミ踊りの徹底など、厳しい指導だったと伺いました。


私が心の片隅に孤独を感じ、店の閑散時間帯と私の来店時間が重なった時、さめぱんを食事スペースでいただきながら、ご主人の昔の思い出を聞く相手をしています。


子園水舘中学校は今年で42周年を迎える学校です

現在は図書部が強い中学校ですが、昔は運動系の部活動が強かったそうです

三上さんは今から31年前に中学校に入学し、ゴールキーパーとして3年間部活を頑張っていたそうです。おじさんは、カウンターの上で肘を組んで、懐かしげに言いました。

「楽しかったなぁ、あの頃は。スマートフォンがなかったというのも良かったのかもしれない。サッカーは基本的に外でやるスポーツだから、いつも天気が気になってね。おじさんは朝、学校で学校に行く時に木の匂いを嗅いでいたんだ。店の前にある、あの木だよ
どうしてだか仕組みはわからないけれど、その日一日晴れるときは湿っていて、雨が降る時には乾いていたんだ。僕は毎朝その感覚で天気の確認をしていたんだよ。」

「スマートフォンがなかったのが良かったというのは?」

「スマホがあったら木の匂いを嗅いで、天気を確認しようなんて、思わないだろ?」

「そうですね。今なら、事案ですもの」

「・・・・・・そうだな」

「おじさん?」

「ああ、ごめんごめん」

「テレビはあったんじゃないですか?」

「テレビは、僕の登校時間に天気を言ってくれなかったんだよ。」

「それで?」

私は、さめぱんのひれを、口に押し込みました

「その日、あの木がいつもより甘い匂いを出したんだよ。」

(次回に続く)