私の家から7分ほど歩いた先にバス停の待合室兼休憩所があります。屋根は円錐形で紫色に塗られていて、壁の部分は昨日木材で囲まれた中にベンチが三つほど並べられています
最近、雨が降ると、そこのベンチに座って雨音を聞き、外を見ながら休憩しています
建ってから随分経ちますので、落書きやクラゲのシールがベタベタと貼られています
そして時々、バス停の休憩所の中を歩き回り、落書きを指でなぞったり、シールを剥がそうとしてみたりして時間を潰します
不思議なことに、そういう時に限ってそのバス停には多くの人がやってきて、入り口側に座り、私に悩みを打ち明けます
今日も赤と黄色のチェック模様のシャツを着た青年がバスに乗りにきました
次のバスまでは10分ほど。その青年は私を見ると自分の考えていることを口にしました
「例えば、今僕が中世時代に送られた時、手に光線銃を持っていたとする。当然僕は襲われるだろう。その時に中世の騎士が来ている鎧は僕の光線銃をはじきやしないだろうか」
私はこう答えました
「もし弾いた時のために、体を鍛えておく必要がありますね」
私は、三上さんのところで聞いた知識を付け加えます。
「もし可能なら、子園水舘中学校に出向いてサッカー部を訪ね、ネズミ踊りを教えていただくといいですよ。体幹が引き締まります」
青年の顔がパッと華やぎました。そして2度ほど頭をうなずかせました
「そうだね、それがいい。体を鍛えておけばもし 光線銃の球が切れてしまったとしてもその場から逃げられるかもしれない。ありがとう、君は悩みを聞くのが上手なんだね」
私はその言葉にひどく喜び、にっこりと微笑みました
9分の後にバスが来て、青年はバスに乗って去って行きました
なんて面白いお悩みだったんでしょうか
バスの待合室から出ると、雨は上がっていました
虹が見えなかったのは残念でしたが、とても心が晴れやかでした。そして私は黄色い傘を左手に持ちながら家へと帰ったのでした