その日は雨が降っていました
雨が降ると私は、お気に入りの黒い大人用の傘を持って駅に向かいます
スカートにはねる水たまりを気にしながら7分ほど歩くと、いつもの見慣れた駅が私を迎えます。屋根は円錐形で紫色です
私は 中野入り口から遠いベンチに座りしとしとと降る駅の蒸し暑い雨音を楽しんでいました
この間見た時には落書きとクラゲのシールがベタベタだった休憩所の構内は落書きが消されていました。代わりになぜか蓄光テープがたくさん貼られ、昼間の太陽の光を吸ってがチカチカぼんやりと休憩所を照らしています
そこに白い服を着た女の子がやってきました。多分6歳だと思います。カンですが
彼女は水玉の傘を持ってするするとマジックテープできれいに傘を止めました
しばらく私と同じ方向を向いて雨を楽しんでいると、私の方を見て言いました
「例えばお宝を盗もうとする悪い猫ちゃんの集団がいたとして、その猫ちゃんの集団は自分の盗ったものを写真に撮ったりしてインスタにあげたりするのかしら
あたしはできれば、ネコちゃんの盗賊団が盗むのは、宝箱いっぱいに入ったどんぐりとかだったらいいなと思います。
お姉さんは猫猫盗賊団達があげるインスタに写っている宝箱の中にはどんなものが入っていたらいいと思いますか?
私は盗賊団の気持ちになりきっていました
穴あきマスクで自分の顔を覆っている姿を考えてみます
「大量のお魚かな」と言いました
その女の子は私を一瞥した後、「現実的ね」と一言言うとバスに乗って去って行きました
宝箱という名前を聞いた瞬間はたくさんのお金が入ってることを想像してしまっい、なんとか考えて絞り出した私には精一杯のファンタジーだったのですが
女の子には色褪せたつまらない大人に見えてしまったようです
残念だわ
ジーン・ケリーのように「雨に唄えば」を歌いながらびしょ濡れで帰ってやろうかと考えたけれども、羞恥からそれを思い切ってできないあたりが色あせた色に染まってしまったんだなぁとひしひしと感じました。
帰りにコンビニでいちごパフェを買って帰ろう
これが私にできる精一杯のファンタジーでした