星が風邪をひいたように瞬く夜、お父さんはいつもの通り襖の奥で静かにしていて、お母さんは扉越しに大きないびきをかいているのを確認。
私はこっそりと家を出ました。
朝の街を散歩してみるためです。
例えば原っぱの一面を覆う雑草の表面にたくさん付着して月光を乱反射させている朝露。
木々の重なりにより作られた影が顔の形に見えるドラム缶。
鶏が吹く早朝の角笛。
そういう、人々の雑多な日常が入り見慣れた街角では絶対に見られないものが見たかったのです。
異常気象による暑さが続くとはいえ、朝方はまだ寒かった。
お気に入りのピンク色のインナーを中に着て、サンドイッチを鞄に入れ、それから小さなタンブラーにコーンスープを入れて、こっそりと家を出て行きます。
昼間はここにたくさんの人生が、知らない通りに行われているのだと思うと、胸の鼓動の高鳴りが早くなります。
静かなコンクリートの間を少しだけ音を立てて歩いて、いいものを見つけました。
牛柄の水たまりです。 近くの自動販売機の柔らかい光が、まだら模様となって水面に反射しているのです。
私は知り合いから借りたポラロイドカメラで一つその様子を収めると、その写真を大事に手帳に挟み込みました。
そして、家から持ってきたハムと卵のサンドイッチを片手に近くの小さな公園に寄りました。
空が黒い。
私はサンドイッチとコーンスープを両手に持って粛々と頂きながら、世界の目覚めを待ちました。
みんなおはよう。そう思うと自分の後ろを新聞配達のバイクが駆け抜けて行きました。
そろそろお母さんが起きる頃だわ。
そう思った私はこっそりと家に帰り、そうして大きく窓のカーテンを開けます。 その日の新しい朝の、新しい景色を私が一番最初に独占するためです。
今日はどんな新しいことと出会えるのかしら。
そして気が付くとベッドの上で寝ていました。
目を開けるとお母さんはカンカンです。
こんなに寝坊な私をきっと怒るつもりでしょう。
皆さんおはようございます。